サッカー撮影45(背景を考える その1) [サッカー撮影]
昨年末のキヤノンフォトコンテスト受賞の際に、選者の先生方から「背景がきれいすぎる。背景に何もないから物足りなさを感じる」とのコメントを頂いたことを、このブログでもご報告しました。上の写真がその受賞作です(主催者さまから掲載の許可をいただきました。縦横比はプリントサイズのままで、リサイズしてあります)。
さて今回のテーマは、この背景についてです。
上の写真は、ある小学生の大会で撮った一枚です。ちなみに、撮影データを記しておきます。
CANON 1D MarkⅣ+EF300mm F2.8 L IS
焦点距離 300mm(換算約390mm) シャッター速度優先AE シャッター速度 1/1000 絞り F4.5 評価測光
露出補正 -1/3 ISO 100 AI SERVO AF RAW ノートリミング
私が撮りたかったのは、中央の緑ユニフォームの選手なのですが、背景には保護者や大会関係者などが雑多に写っています。パッと見、何を・誰を撮りたいのかはっきりしません。私はこれまで、こういった写真は勧めてきませんでした。主題がはっきりしないからです。この画を大胆にトリミングしたものが、下の画です。
ピントはしっかり狙った選手に来ています。これだと、何を撮りたかったのかはっきりすると思いませんか。
もう一例載せます。これも、別の日に撮った小学生の大会での一枚で、ノートリミング。撮影データを記しておきます。
CANON 1D MarkⅣ+EF300mm F2.8 L IS
焦点距離 300mm(換算約390mm) 絞り優先AE シャッター速度 1/1000 絞り F3.5 評価測光
露出補正 -1/3 ISO 100 AI SERVO AF RAW ノートリミング
これも、以前書いたことが有る「サッカーをしている風景」です。私が狙っているのは、中央の紺色ユニフォームの選手である事は分かっていただけると思いますが、その選手を中心に大胆にトリミングしたものが、下の画です。
背景の煩雑さが幾分か解消されて、サッカー選手のプレイ中のシーンとして見られる画だと思います。こうしてトリミングをして、画の中で主題を大きくすれば、必然的に背景部分が小さくなり、背景を整理することができます。以前から私が、被写体である選手をなるべく大きく撮ることを勧めてきた理由の一つに、この背景の煩雑さを整理する理由があります。だからといってトリミング前提で撮る事は、今まで通りお勧めしていませんが。
また、サッカー撮影とは殆どの場合、サッカー選手のプレー中の撮影である、と言い続けてきました。人物撮影(ポートレート)なのですから、主役はその人物(サッカー選手)であって、背景は出来る限り主役の邪魔にならないよう、排除するかボカスかして、目立たなくする方向で撮ってきましたし、その旨をこのブログでも書き続けてきたと思います。主たる被写体の妨げとならぬよう、引き立てるように、との意味です。
下の4枚の画をご覧ください。この4枚はいづれも、僅かですがトリミングしてあります。
撮りたい選手の撮りたい瞬間はしっかり押さえてあります。ピントも来ています。けれど、トリミングしても背景に映っているのが駐車場の車というのも、サッカー写真としての緊張感に欠けるように思えます。こんな背景なら、いっそ無い方がイイと思われるかもしれません。主題をしっかり撮ったとしても、背景によるプラス効果・マイナス効果が有ると思われます。
では、下の画はどうでしょう。
この写真はナイターでの試合の際に撮影したもので、背景は闇です。故に、選手とボールしか写っておらず、下が人工芝ということもあって、ともすれば、まるでスタジオかどこかで撮ったようにも見えます。ポートレートとしては合格かもしれませんが、実際の試合中のシーンとしては、リアリティに欠く、との評価が出そうです。もっとも、そう言われても、実際の試合現場(公式戦です)がこうなのですから、カメラマンとしてはどうしようもない事なのですが。
サッカー撮影は、広いグランドを常に動き回っている選手を撮る事です。試合中は、ボールと選手は常に動き続けますから、それを狙ってレンズを振り、撮影場所を移動したりします。また昨今は、撮影場所を厳しく指定されるケースも多いです。それは基本的に、背景を選べない、ということです。「この場所から、この角度で撮れば、背景が煩雑にならずに済む」「背景が効果的に作用しそうだ」そう思ったとしても、その場所に行けなかったり、その場所でのプレイだけを撮ってはいられないのがサッカー撮影です。しかし、だからと言って、背景に無配慮なのも、上達の道を妨げるように思えます。
小学生サッカーだと、小学校のグランドで試合が行われることもよくあります。背景に遊具だったり、花壇だったり、隣家だったりが写り込んで来ることもあるでしょう。確かにそれらは、その場所で試合が行われた証左にはなると思うのですが、それらサッカーとは何ら関係ないものが背景に有っても、サッカー写真としてプラス効果を生むとは考えにくい。それならば(背景が選べるのなら)、いっそシンプルな方が良いと思ってしまいます。
モータースポーツを撮るにしても同様です。
まず背景から考えて、その上にマシーンを置くように撮影しています。
モータースポーツの場合の背景は、一杯に入った観客であったり、応援している
チームの色の旗を降ったりしているものとマシーンをリンクさせたり工夫します。
背景は本当に大事ですね。
その作品を良し悪しを決める重要な要素だと僕も思います。
by ゼク (2013-02-24 10:56)
写真によく言われる主題、副題といいますが、ゼクさんが言う様に臨場感を求めるのであれば背景もそれなりの物が有ればと思います。
そして、地方の高校サッカー選手権を撮る機会があり隣にいたプロのカメラマンの撮り方を横目で見ていると、横位置で撮影する方が多いのに気づき、そこからです今まで縦位置個人的プレー専門が多かった私ですが、横位置でゲームの流れ的な物も良いのかなと思っています。(流されやすい性格故)
by fckoji (2013-02-24 19:47)
背景は悩ましい問題ですね、応援する父母が背景に入るとそれなりに画になりますが、レンズ絞り開放で顔をぼかせれば理想的ですね。
できれば何も無い方がシンプルで助かります。
by Cimarron (2013-02-25 12:21)
みなさん、コメントありがとうございます。
ゼクさん、こんにちは。
確かにモータースポーツ撮影でも背景は重要な要素ですよね。私が撮っているサッカー写真より、
ずっと背景が占める割合が高そうですから、その部分の工夫が、全体のクオリティに大きく影響しそう
ですね。なので、難しい。
fckojiさん、こんにちは。
プロのカメラマンは必ず目的を持って撮りますから、我々アマチュアの狙いと一致する場合もそうでない
場合もあります。でも参考になりますね。引き出しの多さという点で、見習うべきことは多いと思います。
Cimarronさん、こんにちは。
おっしゃる通り、背景がうるさすぎるのも問題で、背景はあくまで背景であって欲しいと思っています。
背景が主で、サッカー選手が従というのも面白そうですけどね。
by ジュニアユース (2013-02-25 18:36)
その写真が何の写真なのかということになると思います。
背景を処理した写真は、魅せる写真
背景を意識して入れた写真は、伝えたい写真
私は、大雑把にこんな解釈です。
どちらにしても狙ってるというのがミソなんじゃないでしょうか。
by hiroki (2013-02-27 19:39)
hirokiさん、こんにちは。
おっしゃるとおり、狙う=意識する、ということは、背景に対しても重要なことですね。
背景を処理するか、利用するのか、撮影者自身の力量が試される部分だと思います。
私にはこれ以上の記述は、今のところちょっと無理かな。
by ジュニアユース (2013-02-28 20:33)