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「赤いペガサス」 [本・映画・アニメ・詩歌]

赤いペガサス.JPG

私の生まれた地には、日本でも有名なサーキットが有るので、子供の頃にレースを見に行った経験が無い訳ではありません。当時は今ほどカラフルではなかったマシンですが(もちろんレースクイーンなんてのも居なかったです)、豪快なエキゾーストノートとオイルの匂いには、大いに魅力は感じました。ただ、まだ写真撮影を趣味とはしていなかった事もあって、興味は有っても、そこまで。サーキットよりも隣の遊園地に行く機会の方が多かったです。そんな私が高校生になり、オオッ!と惹きつけてくれたのが、フォーミュラー1(F1)でした。今もそうですが、F1は全てのチームがオリジナルシャシーを使って競います。市販シャシーで競っていた当時のF2やF3などと違い、技術と工夫を詰め込んだチームごとに異なるマシンが、最高峰のスピードで競うさまは、さすがモータースポーツの頂点、と興味を引付けてくれました。ただ、当時の日本ではF1に関する情報が非常に少ない。専門雑誌は僅かに有りましたが、テレビ放送はTBS系列がダイジェスト版をたまに放送する程度(モータースポーツカメラマンの間瀬明さんの解説)でした。それでも、1976年に富士スピードウェイでF1最終戦が行われた時は、テレビにかじりついていたことを思い出します。
さて、大学生になって東京の片隅に住まいを移した私は、近所の古ぼけた小さな飲食店の常連客になりました。安価で食べさせてくれるその店には、大変お世話になりましたが、その料理(と値段)と共に惹きつけてくれたのが、店の奥の本棚に並べてあったマンガ本「赤いペガサス」でした。これを読むために、この店に通ったと言って良いかもしれません。
「赤いペガサス」は、1977~1979年にかけて少年サンデー誌に連載された、村上もとかさんのマンガです。当時のF1界の状況をそのままバックヤードとして、架空のチームであるBIRTON SVE(サンダーボルト・エンジニアリング)とそのドライバー、ケン・アカバが主人公。そう書くと今では、アリガチなマンガに思えるのですが、当時は世界最高峰でありながら遠い海の向こうの話だったF1を、当時の実在のレーサーやF1マシンを実名のまま記すことによって、妙に臨場感がありました。F1に関する情報が少なかった当時だったからでしょうかネ。主人公は多くの犠牲の上、最終戦の日本GPまで、ロータス78に乗るマリオ・アンドレッティとチャンピオンを争う訳ですが、ニキ・ラウダ、ジェームス・ハント、エマーソン・フィッティバルディという、今では懐かしい名前が出てきます。同僚ドライバーの死や妹との微妙な関係などが織り込まれますが、前半の見せ場は、主人公ケンを助けるために、F1マシンによる公道血液輸送リレーでしょうか。私的には、この当時(1978年頃)の、機能美と実力を併せ持った、「Jhon Player Special ロータス78&79」は、ホントに美しいマシンだと思いました。
なぜ今さらこんな昔のマンガを、と思われるでしょうが、最近本棚を整理していて、出てきたのですよ。連載当初はまだ粗い画なのですが、最後に行くにつれてリアリティを増していく様は、「バリバリ伝説」にちょっと似てますね。単行本は全14巻なのですが、家族持ちになってから、思わず懐かしくて買ったこのワイド版は全6巻。1991年の初版本なので、もう22年も前に購入したものです。なので、日焼けして少々見栄えが悪くなってしまった本ですが、これを手にすると、あの薄暗い店の片隅で、チキンカレーのスプーンを持ちながら読みふけっていた自分を、フッと思い出してしまいました。

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おおぬま ゆうじ

私は、セナ・マンセル世代。
ウィリアムズルノーが頂点から少しばかり崩れ落ちた時期にF1見入ってました。
今は地上波で放送もしておらず、少しさびしいです(笑)。
もちろん、あとから書物を読み漁り、JPSのロータス78の革新的なダウンフォース技術は
知っております
その影響で、コーリンチャップマンを神と崇めて、ロータスファンになりました。
ほんと、あのJPSロータス78や79は私の世代の少し前ではありつつも
いまだに、そのデザインと、ウィングカー技術の先進性など、とても素晴らしい車だと思ってます
すごくかっこいい!
また最近ロータスの名がサーキットに戻ってきてうれしく思いますが
今はレッドブル・・・すごいですね
やはり、デザイナーとパッケージングのバランス、ドライバーの技術もさることながら
脱帽です
ロータスファンといいながら、ジル・ヴィルヌーヴのファンです(笑)
脱線しますが、佐藤琢磨、インディー日本人初優勝おめでとう!ですね!
by おおぬま ゆうじ (2013-04-28 09:07) 

kotodaddy

こんにちは。
私も持ってます、赤いペガサス^^
実際に読んでたのはおそらく小・中学校の頃だったと思うのですが、
ジュニアユースさんと同じく、やっぱり懐かしくて一昨年だったかに
ヤフオクで入手しました(笑)。

主人公ケン・アカバが世界チャンピオンを賭けて争う最終戦、地元日本GP。
大きくトップから離されながらも、後半に超人的な追い上げを見せて勝つ。
この辺は妙に「バリバリ伝説」に通じるものがあって、バリバリの著者しげの氏は
「赤いペガサス」に影響を受けた部分もあるのかなぁ、なんて思ってました^^

by kotodaddy (2013-04-28 19:07) 

アプロ

私は高斎 正の「ホンダがレースに復帰する時」かな。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AB%98%E6%96%8E%E6%AD%A3
by アプロ (2013-04-28 21:49) 

ジュニアユース

コメントありがとうございます。

おおぬまさま、こんにちは。
あの頃のF1は、モータースポーツの最高峰でありながら、バックビルダー的な雰囲気もあり、
今の商業主義傾倒とはちょっと違いましたね。もっとも、情報が少ない時期でしたから、真実は
分かりませんが。フジテレビが放送するようになってブームになった頃から、逆に私は引いて
しまいました。でも、セナはカッコ良かったです。

kotodaddyさん、こんにちは。
特別有名な漫画ではなかったので、こんな話をしても誰も知らないだろう、と思ってましたが、
この本お持ちでしたか! 何となく嬉しいです。
確かに最終戦の様子は、バリバリ伝説の最終戦と似ている所がありますよね。まあ、漫画ですから
こうでなくちゃ!という終わり方で良かったと思います、どちらも。

アプロさん、こんにちは。
高斎 正さんは、詳細な取材の下で書かれることで有名ですよね。多くいの著書があるのに、
私はまだ読んだことが無いのがお恥ずかしい。


by ジュニアユース (2013-04-29 20:44)