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お待たせしました [巷の雑感・時の想い]

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先日、あるコンビニエンスストアに行ったときのこと。
駐車場がかなりの車で埋まっていたので、店内が混んでいることは、容易に想像ができた。サッサと目的のものを見つけた私は、2つあるレジの一方の列に並んだ。ご存知のことと思うがコンビニは、閑散期は1つだが、忙しくなるともう一つのレジも開けて対応するのが通常だ。私が店に入った時は、既にレジは2つ空いていて、2列の客列ができていた。このレジとレジの間のスペースにも、最近では調理済の商品などを置く店がほとんどで、ちょうどその時も商品を覗きこんでいる男性が一人。
「お待たせしました、次の方どうぞ」
という店員と、その男性とが偶然目が合ったものだから、その男性が商品を指さし、金銭を払って出て行った。
「お待たせしました、次の方・・・」
という店員の声をかき消すように、その女性は猛然と言い放った。
「あなた、私が並んでいたの、気付かなかったの!」
「あっ、すみません」
という店員の言葉などに耳を傾けず、店内に響き続ける声で、延々と続ける。
「ここの店はどうなっているの! どういう教育されているの!」
「レジの真ん中に並びなさいっていること! どこの店でもそういうやり方なわけ!」
「お客を平等に扱いなさいよ、あなた!」
アルバイトと思しきその若い女性店員と、30代のように見えた女性客の間には店のカウンターがあるのだが、半ば身を乗り出すようにして、吠える吠える。店員はもう、消え入りそうな声で、「申し訳ありません」と言うのが精一杯。当然、私を含む店内の客は皆、その光景を凝視することになるのだが、それが延々と続いたものだから、連れていた4~5歳の女の子はその視線に怯えたのか、吠える母親の足にしがみついてしまっていた。ようやく溜まったものを吐き出した女性客は、今度は勝ち誇ったような表情で、ゆっくりと注文をしだした。当然、その吠える女性客の後ろに並んでいた客達は、更に長い時間を強いられることとなり、もう一方の私の列に移ってくる人もいて、レジの混雑が解消するまで長い時間がかかったことは言うまでもない。そして、精算を済ませた客たちのほとんどが、その女性客に対して同情ではない眼差しを向けて出ていく。私はこの女性客が連れている子供が、ちょっとかわいそうに思えた。
確かに、列に並んでいなかった客を先に精算してしまった店員に、過失を認めない訳にはいくまい。しかし、たとえそうだとして、それによってこの女性客が待たされた時間は、いかほど増えただろう。僅か1分程だと私は思った。それに比べこの女性客の抗議行動は、その数倍にも達した。つまりこの女性客、その後ろに並んでいた客に対して、先の割り込みをしてしまった男性客の数倍にも及ぶ迷惑をかけていたのである。この女性客の行動を是とするなら、その後ろに並んでいる客には、その数倍も抗議する権利が有る、ということになる。いや、その女性客の直後に並んだ客だけではない。一つのレジを占有してしまったのだから、もう一つのレジに並ばなければならなかった客にも当然影響が有ったはずだし、そう見れば、レジに並んだ客全体に程度の差こそあれ、時間がかかった、という影響が有ったと考えるのは、不自然ではないだろう。それならば、この店でその時にレジに並んでいた客全員の不満は、アルバイト店員の一瞬の不注意のみに責任を押し付けて良いものだろうか。
国際社会において日本人は、権利を主張するのが下手な人種だとの通説が有る。古来、沈黙を美とする側面もあったし、奥ゆかしさを讃える習慣もある。狭い島国である日本で、多くの人が肩寄せ合って生活しているのだ。肩が触ったかどうかで、主張し合ってもしかたない面はあると思う。広大な領土を有する国に住む人々や、地続きの国境を巡って抗争を繰り返してきた国に住む人々とでは、違うのかもしれない。でも、違って良いではないか。ここは日本。そして、私は日本が好きだ。
数分前まであんなに大声で吠えていた女性客は、他の客の視線にようやく気付いたのだろうか、我々の方には一度も顔を向けようともせず、むしろ顔をそむけるようにして店を出て行った。気付いたのなら彼女もまた、日本人である。

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wataru-wata

こんにちは☆

とても難しい問題ですよね。

こういう場面で、見て見ぬふりをするのが大人の対応とするのであれば、子供に「順番は守りなさい」と指導し、それを守らない時に叱る”シツケ”に意味をなさなくなりますから・・・。

自分の普段の行いを少し考えてしまいました(笑)

by wataru-wata (2013-10-16 11:55) 

ジュニアユース

wataru-wataさん、こんにちは。
日本には、「人の振り見て我が振り直せ」という諺があるではありませんか。
何も直接的な行為に及ばなくても、他人の行動を見て、良いところは見習い、悪いところは自らの今後の反省の礎にする、
ということで良いのではないか、と思います。

by ジュニアユース (2013-10-16 23:41)