機上の人 [巷の雑感・時の想い]
七夕の日には、およそ望まれないであろう、一面の鉛色
往路には、大粒の雨に遮られたこともあったというのに
大阪湾に浮かぶ孤島着けば、待っていたかのように青色が広がる
日が射せばアスファルトを焼き、陽炎が揺れる
ここは旅立ちの地、別れの日
飛び立てるということは、羽ばたく力が付いたということ
真っ直ぐに進めるということは、目標があるということ
振り返らず躊躇ない姿は、意志があるということ
願ったことに挑めるのは、シガラミの無い身軽さの証拠
展望デッキに追いやられた身に、先程まで見ていた残像がゆらめく
別離が悲しい?
心配?
自らの無力を感じる?
悔いる?
うらやましい?
力強い爆音が、頭上はるか彼方に行き去れば、静寂の中
言いようも無く湧き上がるのは、寂寥感なのか
否、いや、否と思う、否に違いない
別れ際に握った彼の手は
14年間シュートを防いできた手ではなく
もっと大きくなっていることに気付かされた
機上の人よ
失敗や挫折に恐れるより、飛び立つことを選んだ若人よ
前へ上へ、思ったように飛ぶがいい
しかし、永遠に飛び続けること叶わぬ時、いつか来るかもしれぬ
その時の為に、この大地にて佇み続けることとしよう
この親の命尽きる時まで