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「汚れた英雄」 [本・映画・アニメ・詩歌]

前回は、私が以前バイクに乗っていたことを書きました。今更そんな昔の事をどうして引きずり出したのか、と言えば、先日レンタルビデオ屋行ったのがきっかけ(実は前回の記事は前フリなのです)。旧作7泊8日1本100円コーナーで見つけてしまったのが、「汚れた英雄」です。

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大藪春彦原作の小説(1969年)を、当時の角川書店・角川映画社長の角川春樹氏自らが作った初監督作品(1982年12月公開)。当時の角川映画は、派手にテレビ宣伝してましたから、憶えておられる方もいるかもしれません。原作は読んだことが無いので(1960年代の設定らしい)その対比はできないのですが、公開当時のレースシーンに置き換えて、その長編のエッセンスの一片を再現したとか。まあ私なりに簡単にあらすじを書かせていただくと・・・
全日本ロードレース選手権GP500クラスに参戦するプライベートライダー北野晶夫は、全日本チャンプを手土産に、世界選手権への参戦を目指していた。彼は上流階級の女性を次々とパトロンにすることで、レース参加の膨大な費用を生み出し、ワークスライダーと堂々と渡り合う。そして最終戦で雌雄を決することとなった
という、長編小説をベースにしている割に、映画としては実に分かりやすいもの。主人公の北野晶夫を演じるのは、長身でハーフゆえの濃い目鼻立ちでプレイボーイ役にぴったりの草刈正雄。レーサーとしてのストイックな姿と、女性を惹くオーラを上手く演じ分けていると思いますが、まあ映画としての評価は決して高くないです。ストーリーに深みは無いし、無駄なカットも多いし、どこが「汚れた」なのか分からなかったし、やっぱり今見てもB級の邦画なのでしょう。
ただ当時として、ヤマハが全面協力して菅生サーキットで撮られたレースシーンは迫力がありました。今では小型のCCDカメラなどの機器やCGが使えますし、現在のテレビ放送ではそんなライブな映像が当たり前のように流れていますから、珍しくもないですよね。それが、そんなものがまったく無い当時、ライダー目線で捉えた映像には興奮しましたね。バイクに乗ったことが無い方にはイマイチだったのかもしれませんが、一度でもハングオンの経験のある方だと、ウワッ!と思いました。何といっても実際にYZR500(一部TZ500)を使い、主人公のレースシーンを担当したのは、あの平忠彦なんですからネ。
この映画の一番の見どころは私的には、ラストではなく冒頭の4分程だと思うのです。真っ暗なトランスポーターの中で、レース前の集中を高めるライダー1人。皮つなぎのジッパーを閉め、ヘルメットとグローブを手におもむろに立ち上がり、ギュッギュと皮の擦れ合う音を立てながら(皮つなぎを着たことある方、分かりますよね)ドアを開ければ飛び込んでくる、2ストロークエンジン特有のレーシングサウンド。間違えれば命に関わる事故にもつながるレースに臨む、孤独なレーシングライダーの儀式がそこにあります。そして、ローズマリー・バトラーのテーマソング「Riding High」。この冒頭部分だけは、今でも秀逸だと思うのです。というか、この数分を見て何も魅力を感じなかったら、もう後は見なくていいかも。

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当時滅多に行かない私がですよ、映画館へ見に行った記憶があります。見終わって出てきた観客のほとんどが、ライダーの眼差しでしたね(もちろん私も)。峠に行けばこのテーマソングが脳裏に流れていた、なんていう青春時代の笑い話と言えば、その通りなのですが、こんな映画でも(失礼)ちゃんとDVDになって今も残っていたということが、何とも嬉しかった、ということで。



汚れた英雄


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