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海を見ていた午後 [巷の雑感・時の想い]

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海に面していない県もあるけれど、わが街は、東に行けば海に辿り着く
けれど、その海岸には砂浜などは無く、コンクリートで固められた岸壁
多くの工業製品を積み出す貿易港なのだから、仕方ないこと
そこで働く人々、行き交う大型トレーラー
でも、釣りを楽しむ人影も、有ったりする

ここは湾内だから、当然なのかもしれないけれど、秋晴れの下での静かな波間
人は海から来た、と聞いたことが有るけれど、そうかもしれないと思える穏やかな心
振り返ればきっと、けたたましく時が流れているけれど、眼の前はゆったり泰然自若
本当は、ここで海を見て過ごせる身分ではないのだけれど、今はただそうしていたい

傍らには、太いロープでつなぎ止められている船
大海原に飛び出していきたいのに、不自由な身に無念を抱かえているのだろうか
それとも、その時に向けて着々と準備して、夢を羽ばたかせているのだろうか
物言わぬ彼の胸中など、通りすがりの私などに、分かる由もない
他人が気軽に踏み込んで行ける領域ではないと、船体に無数に刻まれた傷が語る

そんな午後を佇めば、無駄な時間をすごしてしまった、と自責の念に苛まれる
無駄、無駄なのだろうか
作る、配る、話す、運ぶ、売る、治す、育てる、守る、壊す、書く、愛する
人は、そうし続けなければ、存在する価値の無いものだろうか
生きていては、いけないのだろうか

西の山間に沈む夕日は、きっとまた、東の海からやって来るのだろう
踵を返しながら見上げれば、半月
もし、そうなら、と想う
海へ帰るのも、良いのかもしれない

海を見ていた午後2.JPG



海を見ていた午後


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