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サッカー撮影40(小学生サッカー撮影の機材) [サッカー撮影]

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お気づきの方もいらっしゃると思いますが、「ママカメラ」さんという方から、以下のような質問がありました(要約してあります)。

私も息子のサッカーをチームまるごと撮影させていただいてから、早5年がたちます。
息子は4年生です。なんとか市の選抜メンバーにもよんでいただけて、親の私の撮影にも
熱が入る今日この頃です。
が、まだまだ全然上手くなりません。実は、ずっとキットレンズのまま、撮影を続けて
います。ズームキットだったので、多少の望遠ではありますが、高学年にもなると
遠くて何を撮っているのかわからない状況です。小さい地元の大会ですが今度、決勝まで
勝ち残ってくれたので、これを機に、よい望遠レンズを購入しようかと考えております。
そこでご相談なのですが、ジュニアユースさんお勧めのレンズは何がよいですか??
中学生になっても撮り続けたいと思います!
選手たちの輝いた表情やドラマに魅せられたおばちゃんカメラマンはもっともっと
上手になりたいです!!
なので、400mmクラスを持ちたいと思いますが、女の私には重いでしょうか?
今は一脚など使用していません。
それと値段も気になるところです。できれば10万円台、20万円超えないくらいで探して
います。今持っているキットレンズはcanon EFS55-250mmです。
追伸なのですが、、、
たまに体育館でのフットサルの撮影もあり、それにも活躍できるレンズだとうれしいです。
お忙しいところ、たいへん恐縮ですが、お時間がありましたら、ぜひご教授ください。
よろしくお願いいたします。

ブログのコメント欄に書くには長くなりそうで、某掲示板を利用して返信させていただこうかな、とも思ったのですが、質問内容から、同じような悩みや疑問を抱けえている方も多いのではないか、と勝手に推測して、記事として以下に私見を書かせていただきます。

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小学4年生だと、これからNHKカップやチビリンピック、全日本少年サッカー大会やフジパンカップなど、小学生年代での重要な大会・試合がこれから多くなっていく時期です。トレセンに選ばれてたなら、トレセン大会や遠征なども多くなるでしょう。サポートする保護者側も力が入りますし、写真撮影となると、この時にしか撮れない写真をできる限り良い形で残したい、という思いが強くなるのは、私も経験していますので、よく分かります。そこで、写真撮影における機材選びという話です。たとえ小学生といえども、サッカーというスポーツを撮るに当たっては、デジタル一眼レフカメラが最適だと思うので、ここではその前提で話を勧めます。

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以前にもブログで書きましたが、サッカーを撮るならできる限り予算をつぎ込んで、高性能な機種を選ぶべきです。初心者だから、とか、使いこなせるかどうか分からないから、とかで、安価なエントリー機を購入されて撮り始められる方が多いです。しかし実は、そうして撮り始めても、思うような画が得られず、止めてしまう方も多いのです。初心者だからこそ、力量や経験が足りないからこそ、機材の性能に頼る部分が大きいのですから、ここは機材に予算をかけるべきだと思います。ましてや、小学生といえどもサッカーを撮ることは、かなり難易度の高い被写体にチャレンジするということです。プロなど力量の優れた方なら、「弘法は筆を選ばす」ではないですが、プアーな機種でもそれなりの結果を残せるでしょう。その反対のアマチュアでは、機材の性能に頼れる部分は頼って良いと思いますし、その為に頼りになる機材を選ぶべきだと思います。

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サッカー撮影で何が難しいかと言えば、広いグランド内を予測無く、前後左右縦横斜めに動き回る選手を撮らなければならないということです。この点で、AF性能に高いものを要求されます。以前にも書きましたが、AF性能(精度・速度)は、ボディ+レンズのトータル性能です。数年前のことですが、Kiss DX+EF100-400と1D2+EF100-400で撮り比べたことがありますが、その結果は顕著で、もちろん後者の方が格段に優れた結果を残せます。ボディに関しては(私はCANONユーザーなので)CANONを例に挙げれば、60D以上は欲しいところです。
なお、この動体に対するAF性能については、連写速度と比例する関係にあります。連写速度、つまり1秒間に撮れる枚数が多いほど、AF性能が高いのが実情です(例外はありますが)。連写性能は、シャッターユニットの性能ではなく、動く被写体にピントを合わせながら1秒間に何枚撮れるか、という性能だと考えれば、お分かりいただけるでしょうか。全ての機種に該当するわけではないですが、ボディを選ぶ際の、動体に対するAF性能を知る目安にはなると思います。

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レンズに関してですが、広いグランドを動き回る選手を撮るという事は、撮影者と被写体との距離が常に変わっているという状況ですから、普通に考えれば、可変焦点距離のズームレンズが適している、という結論になると思います。では、どのくらいの焦点距離が必要なのか? ご存知の通り、小学生と中学生以上とでは、使用するグランドの面積が異なります。小学生では通常、約68m×50mのピッチを、中学生以上では約105m×68mのピッチを使います。倍ほど違うのですから、要求されるレンズの焦点距離が違って当たり前です。私はこれまで、「小学生サッカーなら、まずはAPS-C機で300mmクラスのズームレンズ」と言ってきました。300mmは、フィルム換算で480mm(NIKONの場合は450mm)です。もちろん、これ以上でもこれ以下でも撮れるのですが、上記の小学生ピッチで最大公約数的に選ぶなら、という意味です。ママカメラさんの要望では、現在のEF-S55-250からもう少し大きく撮りたい、とのことですから、その為には焦点距離の長いレンズに替えるのが当然の結論になると思います。では、例えばEF100-400に替えたとしたら、すぐに満足いく結果を残せるのでしょうか。実は私は、そう簡単ではないと思うのです。

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焦点距離の長いレンズを使うという事は、狙った被写体を大きく撮れることを導きますが、それは画角が狭くなることと同意です。つまりは、ファインダーで見える範囲が狭いことを意味し、静物撮影なら問題なくても、動体撮影で動きが予測できる場合なら何とかなっても、不規則な動きで移動速度もマチマチ、動きの予測も難しいサッカー撮影では、難易度が飛躍的に高くなることにもなります(この点は、以前のブログ「マイ趣味ライフ」の少年サッカーの撮影その53を参照してください)。300mmで上手く撮れていたのに400mmに替えて上手くいかない、これなら300mmのままでトリミングで対処した方が良かったのか、という話は有ります。

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それに加え、300mmまでのズームレンズと、それを超えるズームレンズでは、AF性能的に差がある場合があります。例えばキヤノンで言えば、昨年発売開始されて評判の良いEF70-300mm F4-5.6 L IS USMと、発売開始年代の古いEF100-400 F4.5-5.6 L IS USMを比べた場合、前者の方がAF性能的には優れています。焦点距離が異なるのだから、同じ土俵で比較するのは間違っているのは承知していますが。では、300mmを超えるズームレンズで、EF100-400を確実に凌駕するズームレンズが現在存在するのか、と言えば、(NIKON AF-S 200-400 F4 VRⅡ 105万円以外には)私には現状ちょっと見つけられません。300mm以上のズームレンズ自体が数が少なく、それだけの長焦点距離で高速なAFを実現し、価格もリーズナブルに抑える、という事は難しいのでしょうね。

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焦点距離的にはサッカー撮影に最適だとは思われる、SIGMA 50-500 F4.5-6.3 OS HSMは、評判の良いレンズですが、私は使ったことが無いので、積極的にはお勧めしにくいです。EF100-400は私も使っていたので(今はもう手放しましたが)、これに関してちょっと書かせていただければ、なかなか難しいレンズとの印象があります。300mmまでのレンズを使っていた方がこのEF100-400を使うと、AFが遅い、と感じる方が多いと思います。確かに、特別AFが早いレンズではないのですが、さりとて他の400mmズームレンズに比べて特段遅い訳でもないと思います。USMで無音に近い状態でスッとピントを合わせに行くのですが、そこから厳密にジャスピンに持っていくには一呼吸必要です。不規則な動きのサッカー撮影ですから、当然動きを予測して、狙ったポイント以前から被写体を追従(カメラも自分の眼も)させなければならず、その点でちょっと使いこなしに慣れが必要かと思います。300mmまでのレンズの感覚では、ピントの甘い画を量産しがちです。でも、このレンズを使って素晴らしい画を撮っていらっしゃる方もいますし、私自身も恩恵を被ったことのあるレンズですから、ダメというわけでは決してないと思います(この件については、以前のブログ「マイ趣味ライフ」のEF100-400は本当にダメか? を参照してください)。ただやはり、300mmと400mmでは、撮影難易度の点で、機材の性能の点で、一つの壁があると思います。それと、EF100-400は1998年発売開始のレンズです。これまでメーカーのCANONから正式なアナウンスはされていませんが、初期生産モデルと現在とでは一部変わっている可能性があります。デジタルで使うなら、できる限り新しい生産年のモデルをお勧めします。

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EF70-300 Lにしろ、EF100-400 Lにしろ、ズームレンズなのですから、何もテレ端だけを使う必要もなく、テレ端だけの画質をウンヌンすることも無いと思います。サッカー撮影では、被写体である選手と撮影者の距離が常に変化しているのが当たり前で、それに合わせて撮るためのズームレンズです。その利点を積極的に使っていくことは正しい、と言えます。ただ、付け加えさせていただければ、これは「サッカー撮影16(無駄)」で書いたことなのですが、何でも撮ろうとしないことです。デジタルですから、何枚撮ろうがコストはかかりません。だからと言って、ピッチ上の全てのプレーを撮ろうとするより、撮影した画の平均レベルを上げることこそが大切だと思っています。私はタッチライン沿いに移動しながら撮影することが多いのですが、その際には反対の向こう側のタッチライン沿いのプレーは捨てています。APS-C機で300mmを使ったとしても小さくしか撮れないし、それでは「サッカーをやっている風景」にしかならないし、ファインダー内で小さいのに動く被写体にしっかりピント合わせをすることが難しいからです。幸いサッカーはそんな局地的なスポーツではないので、チャンスをしっかり待ち、来たら逃さない、という気構えでいます。もちろん、(以前のブログ「マイ趣味ライフ」の少年サッカーの撮影その55で書きましたが)、可能な範囲で試合中に撮影場所の移動は試みます。そう考えれば、200mmではいかに小学生サッカーといえど短すぎるとは思いますが、400mmが必須とも言い切れないと思います。私が冒頭に、「小学生サッカーならば、まずはAPS-C機で300mmクラスのズームレンズ」と言った所以は、そんなところにあります。

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説明が長くなってしまいました。ママカメラさんの質問に対する私の回答です。ママカメラさんは既に5年間も撮影経験をお持ちです。ここから更にステップアップされるにあたって、300mmを超えるレンズに挑戦されるのは選択の一つだと思います。ましてや、中学生になっても撮り続けたいとのお気持ちがあるのなら、中学生以上では400mmは必須ですし。では、どのレンズが良いのか、ですが、ちょっと難しいですね。第一候補として純正のEF100-400をお勧めしたいところですが、なにぶん発売開始から年月の経ったレンズなので、現状いつ新型にモデルチェンジされてもおかしくないです。その点が積極的に勧めにくいところです。中古という選択もありますが、中古はコンディションが様々ですから、購入後にメーカーでの調整も視野に入れて、なるべく新しい生産年のものを買う、という選択もアリかと。SIGMA 50-500でサッカーを撮っていらっしゃる方もいますから、この選択も悪くないかもしれません(使ったことが無いので、これ以上のことは分かりませんが)。もう一つの選択は、EF70-300 L。小学生の間は、このレンズと60Dの組み合わせで撮る。中学生になったら(それまでまだ2年以上あります)、全ての機材を手放して、再度その時点でのベストな組み合わせを模索する(私がそうでした)。最終的にはご自身の判断になると思いますが、今の私がアドバイスできるのは、そんなところでしょうか。
なお、一脚は便利だと思いますので、お勧めします(これも、以前のブログで「少年サッカーの撮影66~で書きました)。特に400mmを超える重量級レンズを使う場合は。一脚はただの棒ですから、場所を取りません。移動も楽です。三脚ほどの安定感は有りませんし、手持ち程の自由度もありません。しかし、カメラ+レンズの自重を支えてくれるだけで、試合中の撮影に専念できます。私はサッカー撮影では必ず使っていますが、高価なカーボン製でなくてもよいので、ぜひお勧めしたいですね。

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もう一つ、屋内のフットサルについてです。私も体育館内のフットサルを撮ることはあります。その場合、第一に必要なのは明るいレンズです。私は、EF70-200mm F2.8 L IS Ⅱ USMをメインに使っています。体育館内は、人間の眼で感じるよりもずっと暗いです。特に学校の体育館は。ここでの動体撮影は、単純に明るいレンズを使わないと、シャッター速度が稼げず、被写体ブレの写真量産になります。被写体の一部がブレた写真の方が躍動感があって良い、という意見もあります。しかし、そういった写真、つまりシャープに撮り止めたい部分とブレた部分が一枚の画に混在する写真を量産するためには、かなりの力量と経験、作品撮りの意欲が必要で、チーム撮りの方には向かないと思います。屋内スポーツ撮りも、また難しい分野で、本来はそれ用のレンズを別途用意すべきですが、 EF70-200mm F2.8 L IS Ⅱ USM を購入、屋内はそれを使い、屋外サッカーでは1.4xEXTENDERを付けて使うという方法もアリかと思います。ママカメラさんの、もっと大きく撮りたい、との希望には添えないかもしれませんが、フットサルの撮影機会が多いようなら、一考すべき選択肢かもしれません。

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さて、長々と書いてしまいましたが、私の回答は、
1.EF100-400 F4.5-5.6 L IS USM&一脚の追加購入
2.SIGMA 50-500 F4.5-6.3 OS HSM&一脚の追加購入
3.EF70-300 F4-5.6 L IS USM の追加購入(中学生になったら再構築)
4.EF100-400 F4.5-5.6 L IS USMの中古&一脚の追加購入
5.EF70-200mm F2.8 L IS Ⅱ USM&1.4xEXTENDER Ⅲの購入(一脚もあった方が良いかも)
こんなところです。
もちろん、最終判断はご本人次第で、私はプロではないので、全ての機材を使い尽くした経験も無く、あくまで予測に基づくものですが、参考になれば幸いです。
(なお今回は、単焦点レンズについては外しました。これも考えると、更に長くなりそうで・・・)

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注意:上記の記述は、執筆時点に手に入れられる機材を対象に書いてます。

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