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サッカー撮影51(偶然の産物 後編) [サッカー撮影]

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さて、話が大きくなってしまいました。ここは「サッカー撮影」の場なので、サッカーを撮るということで考えたいと思います。
広いグランドを前後左右に動き回るサッカー選手を撮るのは、決してたやすい被写体ではありませんが、現在のデジタル一眼レフカメラを使う限りにおいては、何も考えずバシャバシャと撮っても、帰宅してパソコンで確認してみると、満足のいく気に入った画を得られることはあります。私はこれまで初心者の方には、何枚撮ってもコストのかからないデジタルなのだから、とにかくいろんなシーン、いろんな設定で撮ってみて、ステップアップしていくことを勧めてきました。そうして特に何も考えずに撮った膨大な枚数の中から、気に入った一枚を得られたとしても、それはサッカーを撮ろうという意志の産物であり、偶然や運の賜物だと100%言い切ることはできないと思います。たとえそれが、数百枚・数千枚の中の一枚であったとしても。
ただ、撮影者自身が何もイメージせずに、闇雲にシャッターを切った結果で得られたもの、そして、気に入った一枚といっても、何がどう気に入ったのかまだ分かっていない、そうした最初期の段階では(誰もがくぐってきた関門の一つなのですが)、前回に書いた、機材・知識・技術・意図・感性・意欲の占める割合が小さく、故に撮った画が安定したクオリティを得られず、良い写真・満足のいく画が、運や偶然性に左右されやすいでしょう。そうした初期段階で留まってしまう、そこで終わってしまう人なら、サッカー撮影は偶然の産物、と言ってしまうかもしれません。しかし、そうした段階から、もうワンステップ上に登ろうとするのなら、そんな言葉を使うべきではありません。前回書いた、撮れればいい、という記録的側面の話ではないのですから。

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自分の子、又はそのチームを撮っていて、シュートシーンを撮りたい、ゴールキーパーのナイスセーブを撮りたい、勝利を決めてガッツポーズの画を撮りたい、撮影者にはいろんな希望が有ると思います。しかしそう思ったとして、一試合頑張ってレンズを振っても、チームが勝利しなければ、シュートが飛んで来なければ、撮れないことは事実です。それ故、高価な機材を使っていようが、技術や知識が豊富であっても、目の前で起こる現実を撮る以上、撮影者の希望に沿わない、どうしようもないところは確実に存在します。とりわけ、スポーツは筋書きの無いドラマなのですから、思ったようにいかないのが当たり前のところがあります。
では、そんな狙ったシーンが一度も眼前に現れなかったとしたら、一度もシャッターを切らないのでしょうか。私は、実際にはそんなことは無いと思います。なぜならば、撮影者自身の希望するシーン以外にも、良いと思うシーン、印象的な表情、感動的な場面、などが存在すると思うからです。一試合を通じて眼前で繰り広げられる筋書きの無いドラマの中には、形にして残して置きたいシーンは、実は無数にあって(もちろん、凡戦もあれば好戦もありますから、一概に多数とは言い切れませんが)、実はその中の極一部のシーンを希望として持っているに過ぎないことに気付くべきです。その撮影者の希望のシーンといっても広狭さまざまで、より多くのバリエーション、より多くの着眼点を持っていればいるほど、それらを形にして残せる確率は高まり、依ってそれこそが、撮影者の力量のバロメーターとなるのだと思います。スイートスポットが広ければ広いほど、巧打を生む確率は高く、狭ければ狭いほど、好球が来てもミスショットになる確率が高い、ということだと思います。
前回述べたように、写真撮影が撮影者の目の前で現実に起こっている事を形にして残す行為である以上、偶然や運に左右される部分を(一部の例外を除いて)完全に排除することはできません。しかし、それが全てではありません。それを小さくできるのです。サッカーというスポーツは、プレーが途切れず、僅か1分にも満たない時間で攻守が入れ替わる、ピンチがチャンスに変わるスポーツなのですから、それを撮るのであれば、撮影者自身のスイートスポットが広くなければ、目の前で流れていく光景で、ココ!と切り撮って形にして残せる訳がない。私はここで「スイートスポット」という言葉を使いましたが、機材・知識以外に撮影者が持つ「引き出しの多さ」といった言葉で表現される、作品にできるバリエーションの多さとその技量の奥行です。そしてそれにプラスして、瞬時にそれを感じ取れる感受性の鋭さです。それらはやはり、多くのトライアンドエラーで積み重ねた経験、多くの作品を見て養った眼、常により良いものを求める意欲、等によって培われたるもので、偶然性や運を最小にできる力だと思います。

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サッカー場に着いて、試合が始まる・撮影を始める前の僅か2~3分でいいです、今日これから撮ってみたいシーンを思い浮かべてください。1つ、2つ、3つ。NO! もっと! 5、6、7、いやもっと! 10、11、12・・・。さて、撮影に入りましょう。筋書きの無いドラマです、希望したシーンを全て、ものにできた訳ではないでしょう。でもどうでした? 撮影開始前に思い浮かべたシーンのうち、幾つかは撮れたのではないでしょうか。その画は偶然に撮れたものですか? 運が良かったからですか? 違いますよね。あなたが狙って撮った画ですよね。

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