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終戦 [巷の雑感・時の想い]


随分と、長い旅をしてきた気分です
たどり着いたのは
灼熱の砂漠でもなく
寒風吹く凍土でもなく
さわやかに晴れ上がったグランドでした
この旅で私は
何を得て、何を諦めたのか
何が楽しく、何が辛かったのか
これからゆっくり振り返ることにします
今はただ
澄みきった天を仰ぎ見るのみ



6年前と同じタイトルで書かせていただきます

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2009年11月1日、雨。その日、この子の兄はスパイクを脱ぎました。そして2015年11月3日、この子は現役サッカー選手としての活動を終えました。兄の引退からちょうど6年と2日、場所は同じ伊勢FVでした。
高校サッカー選手権は、高校サッカー選手にとっては最後の公式戦。その県大会はトーナメントです。組み合わせが決まった時から、このインターハイで敗れた優勝候補と再戦することを望んでいました。それまでは負けない、と声を合わせて頑張ってきました。そして準々決勝で、その希望はかないました。インターハイの後、レギュラーメンバーの半数が受験の為に退き、残った3年生と2年生で、一からチームを作り直しました。それは簡単な事ではなく、一時はどうなることかと心配もしましたが、日増しに団結力が増していくのを感じていました。特に優秀な選手がいる訳でもない雑多なチームです。それがこうしてここまでこれたのは、指導者の方々の努力はもちろん、試合に出れないチームメイトの応援や、保護者の叱咤激励も糧になったことと思います。
それまでの2年間に蓄えた力を基に組み上がったインターハイ時のチームは、このU-18日本代表を擁する強豪校と真っ向勝負を挑み、0-6で散りました。それより明らかに劣ると思われた現在のチームは、守備的な戦い方をせざるを得ません。ただ屈強な選手が一人も居ないので、全員で守備の意識を高くして試合に挑むことが求められました。息子の背番号が9から6に代わったのも、その表れでしょう。そうして臨んだ一戦、前半を0-0で折り返したのは、成功と言ってよいでしょう。後半半ば、コーナーキックからの混戦で、ゴールキーパーがキャッチしたボールが僅かにゴール内に入ったとの判定で失点してからも、最後まで足を止めず、集中力を欠かさず、追加点をさせなかったのは、褒めてあげたいと思います。0-1で試合終了のホイッスルを聞いた時、息子の眼に涙や後悔は浮かんではいなかったです。
まだ足元がおぼつかない時から、兄のサッカーの試合に同行して育ったこの子は、サッカーをするのが当たり前だと思っていました。そして何の躊躇も無く、幼稚園・小学校・中学校と兄と同じチームに入り、同じこの高校にやって来ました。その道半ばで、サッカーを諦めなければならないほどの事故を経験しても、兄と同じように、この地でスパイクを脱ぐことができたことに、本人も私たち親も、感無量です。私が「親」という立場になって今年で26年。兄がサッカーを始めた1996年から数えて今年で19年ですから、2/3以上を占めた「サッカー選手の保護者」という立場も終わりました。この子達をファインダーで追うようになって丸13年。サッカー選手の保護者でいられた2/3以上を、カメラマンとして活動してきました。それももう、終わって良いのかもしれません。
試合終了後、バックにカメラ機材をしまい込んでいる私の後ろに、息子が静かに歩み寄りました。そして、「父さん、ありがとうね」そっと一言、私にしか聞こえない小さな言葉が投げかけられました。私は思わず熱いものがこみ上げ、振り返ることができませんでした。
我が子のサッカー選手としての道程も幕を下ろしました。このブログをご覧の方の中で、応援していただいた方々、この場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました。そして、このブログをご覧の方で、サッカー選手の保護者の方々へ。始まりが有れば終わりもまた来ます、それがいつになるか分かりませんが最後は、その子の親であったことを、幸せに感じて欲しいと思います。
私は今、幸せです。

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