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サッカー撮影118(縦か横か その2) [サッカー撮影]

前回、大きく撮ることの意味・メリットをまとめましたが、もう一つ付け加えるならば、大きく撮る=撮影者と被写体との距離が近くなる、といった場合、その間に介在する空気の影響を少なくなる、という点が挙げられます。しかしこれは、周りの環境や使用機材によって、必ずしも起きる訳ではないので、ここでは割愛します。

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さて、ここからが本題です。現在の写真は殆どデジタルになりましたが、一枚の写真の縦横比はフィルム時代と変わらず3対2の長方形です。フォーサーズやレンズ一体型デジカメには4対3も見られますし、スマートフォンのカメラは16対9に近かったりします。プリントする際には用紙サイズの縦横比にトリミングする場合もありますから、「写真=3対2の長方形」と断定することはできません。ただここでは、デジタル一眼レフカメラを使ってサッカー撮影することを前提にしていますので、記録画としては3対2の長方形であることを前提に話を進めたいと思います。
サッカー撮影が、プレイ中の選手を被写体としている以上、人物撮影です。その選手は、走ったり跳んだりしますが、基本的には立った状態ですから、縦に長い被写体だと言えます。これを大きく撮ろうとすれば、3対2の長辺を縦に、短辺を横にした方が優位であることは自明ですね(ここでは縦撮影と呼ぶことにします)。単純に天地一杯に選手を頭から足先まで撮れば、縦撮影の方が横撮影より選手を1.5倍の大きさで撮れます(上図①参照)。そして実際の作例を下に挙げます。②と③はどちらもノートリミングです。一枚の写真に占める選手の大きさの差が分かっていただけるでしょうか。

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この縦撮影での難点が二つ。一つは、一眼レフカメラ自体が横での撮影を基本に設計されているので、そのまま縦撮影しようとすれば、シャッターボタンが押しにくいこと。これを解消するには、バッテリーグリップを装着して、それに付いている縦撮影用のシャッターボタンを使うことが効果的です。バッテリー容量も倍増されますから、撮影枚数が多くなりがちなサッカー撮影では好都合でしょう。縦撮影が多い場合は必須と行って良いと思います。逆に、バッテリーグリップ(と追加するバッテリー)の追加購入という出費を覚悟せねばなりません。また重量増を招きますから、その対策も必要になってきます。もっとも、最初から縦用シャッターボタンが付いている機種(概ね高級機になるでしょうが)を使うのならば、そんな心配も無用になりますが。

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もう一つは、ピッチ上を不規則に動き回る選手を撮るにあたって、横撮影より縦撮影の方が捉えることが難しいことです。選手の動きに合わせ、ボールの行方を追いながら、レンズを左右に振っての撮影となりますが、ファインダー内画像が横長長方形に比べ、縦長長方形の方が難易度が高い、難しいです。40m先の選手がドリブルで駆け上がるシーンを撮るとして、横撮影でファインダーで見れる幅が6mだとするなら、縦撮影では2/3の4mです。「僅か2mの差でしかない」サッカーを撮ったことの無い方はそう思うかもしれませんが、実はこの差故に横より縦の方が1.5倍は難しいです。これは、ボールや選手をロストする可能性が高くなることや、選手やボールの動きを予測してレンズを振り、AFを駆動してピント合わせに掛ける間(コンマ何秒かでしょうが)を作り出すのが難しくなることを意味します。

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もちろん前回書いたように、縦にしたからと言って大きく選手を撮れないようでは、縦の意味が薄れます。上の画⑥は狙った選手にしっかりピントは来ていますが(等倍切り出ししたのが、下の⑦の画)、縦にしたメリットを有効利用しているとはいいがたいですね。

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難易度の高い縦撮影で大きく選手を捉えることができるようなら、刻々と変わる目の前のシーンで、撮りたい選手、撮りたい瞬間をイメージしてシャッターボタンを押さないと、縦の意味が薄れます。ボールを競り合うシーンを撮りたければ、ただ何となく選手の塊を撮るのではなく、その中のどの選手を撮りたいのか、撮影者の意思をはっきり持って撮らなければ、ただでさえ難しい縦撮影で良作を得ることは少ないでしょう。その為には、高性能はAF性能と、撮影者の高度な集中力が必須となります。「横で撮るより縦で撮った方が疲れる」そんな声が聞かれますが、それは事実です。

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(今回掲載の画像は、⑦以外は全てノートリミングです)

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