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「白昼の死角」 [本・映画・アニメ・詩歌]

正直に自白しますが、私は音楽的センスというのが欠落している人です(キッパリ)。もちろん、カラオケなど行ったことが有りません(キッパリ)。
小学生の時にはそんな事に考えも及ばなかったのですが、中学生になって音楽の時間になると急にトーンダウンしてしまう人でした。合唱なんかトンチンカンな音程の声を出すのでクラスメートから遠ざけられ、楽器演奏などもどれだけ練習してもダメで、「あれは魔術に違いない」と諦めてました。どんな楽器でも、それを扱える人は「天才に違いない」と今でも思っています(キッパリ)。そんな私ですから、中学生の時には5段階評価で常に2でした。高校受験の時に進路指導の先生から、「Y高校を受けるのに、2が有ったんではなあ」と言われてしまい、音楽担当の先生に掛け合ってくれて、私一人のために追試をしてくれました。筆記試験です。音楽担当の先生は、「これで100点近く取ったら、3にしてあげる」との約束を取り付け、筆記試験なら、と猛烈に頑張って(当時)、何とか「3」を獲得したのでした。
まあ、そんな話はこのともかく、音楽的センスは無くても、一時期オーディオにハマっていたことも有って、音楽は聴きます(今は主に車内ですけど)。好きなジャンルは?、とか、好きなアーチストは?、という質問には省略します。そんな私ですが、先日フッとある曲(の歌詞の一部)を不意に思い出してしまいました。

愛しい人よ もう一度振り向き
もう一度この胸で泣きなよ
せめて夜が来る前は
お前の涙を信じよう
都会は明日が見えない
ああ ああ 欲望の街


どうしてこの曲が急に脳裏に蘇ったのかは分かりません。でも皆さんも、そんな経験ありませんか? ずいぶん昔に聞いた曲が急に蘇る、ということ(加齢のせいだ、と言わないで下さい)。で、確か映画の主題歌だったような気が。こうなると、どうしても確かな回答が欲しくなるのは人のサガというやつでしょう。ずっと考えていましたが、現代ではインターネットという何でも調べられるものが有るではありませんか。歌詞の一部でも入力すれば、直ぐに回答が出てくる便利な時代になったものです。そしてこの曲が、1979年のダウン・タウン・ブギウギ・バンドの「欲望の街」であること、角川映画の「白昼の死角」の主題歌であることが分かりました(ずいぶん長い前振りでスミマセン)。
こうなると、当時映画館で見たはずの「白昼の死角」をどうしても再度見たい! 1979年の映画ですから40年以上前です。DVD化されているのか?レンタルDVD店に有るのか?が気になります。案の定、近所のレンタル店に行っても在庫無し。他店を廻っても、見つけることができません。こうなると、見たい・聞きたい意欲が膨れるばかり。隣町のレンタル店に在庫があるとの情報を得て、行ってきましたよ、たった一枚(110円)のために。で、見終えてどうだったかと言えば、ああスッキリ!という爽快感がまず第一。せっかく7泊8日で借りたので、その後もじっくり何度も見てしまいました。

白昼の死角.jpg

さて、以下は私的レビューです(やっと本題)。「白昼の死角」は、高木彬光氏の1960年の小説で、1979年に映画化。実在の事件である「光クラブ事件」がベースらしいですが、戦後間もない日本が経済的に未熟なのを見切って、主人公の鶴岡七郎が次々と繰り出す、法の狭間を狙った詐欺事件の数々を描いています。その主人公を演じるのが(今は亡き)夏木勲(夏八木勲)さんで、角川映画によく出ている俳優さんですね。でもここではバリバリの主演で、真の悪役を見事に演じています。そしてこの映画の秀逸な点は、だいたい悪役というのは最後に捕まるか死ぬかのどちらかで終わるのですが、この映画では最後まで悪のままで終わった、という点でしょう。(今は亡き)天地茂さん演じる検事もカッコイイですが、諭されて改心したように見えて、実は最後まで悪の信念を曲げない。そのある意味での潔い後姿に、宇崎竜童さんの渋い歌声が重なれば、学生だった当時の私には何ともカッコ良く見えた映画でした。勧善懲悪の物語も好きですが、悪と知りつつ悪を貫く、というテーマは新鮮に思えました。「狼は生きろ、豚は死ね」というキャッチコピーも刺激的でしたね。
もちろん40年以上も前の映画です。現代では使われない(使えない)言葉が出てきたり、幼稚で不可思議な表現・場面等も有ります。それに登場人物の多くがタバコを吸うシーンの多いこと(男がタバコを吸うのがカッコイイ時代でしたね)。けれど、この俳優さん達を使って撮り直すことなど二度とできないであろう、と思えるほど、後の大俳優さんが脇役として多数登場しています。今となっては完成度の高い映画作品、という訳にはいかず、もちろん文芸大作や派手な戦闘シーンの活劇ではないので、依って名作とは呼べないかもしれません。万人にお勧めできる訳ではありませんが、私の脳裏にフッと再来したのですから、若かりし頃に強く印象付けるだけのインパクトが有ったのでしょうネ。今回は、懐かしい映画を見た、ということでお許しを。でも、主題歌は今聞いてもイイと思いましたけど(当時の角川映画には主題歌がイイものが多かったですネ)。



「欲望の街」


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