NSXの印象をちょっと書かせてください。
やっぱり、フェアレディZが大量生産のスポーティカーに思えるような、各部の独特の造りとコストの掛け方を感じます。フェアレディZも低かったですが、NSXはそれよりも更に低い(車高も最低地上高も乗車位置も)。では運転しづらいか、といえば、全くそんな事は無く、前にエンジンが無い分、とても前方視界はイイです。車の四隅も判断しやすいですし、後方も慣れればそんなに怖くないです。斜め後方には確かに死角がありますが、バイクも自転車も歩行者も、自分の目線よりも上にありますから、思ったより心配は無用。逆に注目度が高いので、信号待ちなどしていると、視線が八方(それも斜め上方)から飛んできます。トランクは使いやすいのですが、蓋もアルミ製の薄いものでペナペナ感があり、閉めた時の重厚感はありません。逆に、運転席のドアはそんなことがなく、実にしっかりした剛性感をもって開閉できます。ただこのドア、大きくて厚い。ドアをちょっと開けただけでは、運転席から足を地面に降ろせません。サイドシルも幅広いですしね。駐車場に停める際、隣の車とのスペースが通常の倍以上無いと降りられないので、停める際には場所を選びました。普段使いで最も不便なのがこの点で、前オーナーが手放した理由が窺い知れます。まあ、セカンドカーとして純粋に走りだけを楽しむのであれば別ですが、私なんかこのNSXでホームセンターに買い物に行ったり、ラーメン食べに行ったり、してましたから。
高速道路では楽だろう、といえば、その通りなのですが、追い越し車線に出ると、前の車がみんな急いで走行車線によけてくれるので、何だか申し訳ない気も。別に煽っている訳ではないんですけどね。冬に淡々と高速道路を走っている時、車内がグングン冷えていったことがありました。ヒーターの故障か、と思ったのですが、水温計を見ると真下を指しています。この車、冬はオーバークールになるんです。もちろん、峠にも行きましたし、鈴鹿サーキットの南コースも走ったことがあります。街中を走っている時は、一般車に近いダルなハンドリングで、ちっともスポーツカーらしさが感じられないのですが、走るゾ!と気合を入れて、全輪の荷重を感じながら走ると、見違えるようなシャープな切れ味を堪能できます。これがこの車本来の姿なんでしょうね。
      
で、そのNSXをどうして手放したか、というと、実は盗難にあったのです。自宅のガレージに停めておいたら、朝には無くなっていた、というやつです。もうその時は一瞬、呆然としてしまいました。もちろん警察に届けたのですが、約2ヶ月後に哀れな姿になって、岐阜県の田んぼの中で発見されました。この車との付き合いが、こんな形で終わろうとは思いもしませんでしたが、それ故余計に、忘れ得ぬ車となってしまったのかもしれません。中古車情報でNSXを検索したりするのと、あの当時に私が買った値段と、大して変わらない価格で出ています。今の身分ではとても手は出ませんが、もう一度乗ってみたいと思わせる車でしたね。
物置から掘り出した一冊の雑誌が、そんな昔の記憶と今の想いを蘇らせてくれました。

ところで、このNSXのことをブログに書こうと思って、写真を探してみたのですが、見つからないのです。なので、この雑誌に載っている写真が唯一かも。デジタルカメラも無かったですから、フィルム写真で何枚かは撮ったはずなのに、どこへ行ったのか。考えてみると、あの当時は撮って、カメラ店でプリントして、その後は机の引き出しに入れっぱなしだったような。キチンと整理して、アルバムに張って保管すれば良かったのでしょうが、今となっては・・・、ね。それに比べて現在は、ちゃんと仕分けして、HDDに保管してあり、必要な写真は直ぐに取り出せるようにしています。これはやっぱり、デジタルだからですね。データ量が大きくなりすぎているとか、撮影枚数が多いので整理が大変とか言われるデジタル写真ですが、フィルム時代に比べたら、収納場所も取らず、整理もPC内部で済ませることができ、取り出してプリントすることも加工することも容易、と随分便利にはなったと再確認した次第。趣味で写真をやってます、と言う以上は、今しか撮れない写真をしっかり撮って、きちんと残しておかないとダメだなあ、と思いました。忘れ得ぬ車と同様に、忘れ得ぬ写真も。