ISO400・F5.6・SS1/500で適正露出の画は、Avで撮ろうが、Tvを選択しようが、ISOオートを使っても使わなくても、同じ画。そのパラメーターで満足なら、どのモードを使っても構わない。ただ、F5.6で撮ったが、被写界深度を深めたF8.0やF10でも撮っておきたい、とか、1/500で撮ったが飛沫をもう少し鮮明に撮っておきたいので、1/1000の写真も残しておきたい、という、撮影者に趣向や意図が生じた場合に、そういったパラメーターをダイヤルをちょっと廻すだけで変化させやすいモードを選ぶ、という選択に、実際にはなるのではないだろうか。つまりは、絞り(F値)の変化によるボケと被写界深度の選択、使用レンズの解像&シャープネスなどのコントロール(開放F値は使いたくない、回折現象にならないように、など)、シャッター速度(SS)の変化によるブレの防止&活用、これらの要素を写真表現の手法として利用しようとする、積極的な意思によるモード選択だろう。これは、撮影者自身の能動的な選択だと思われる。



もちろん、サッカー撮影においても、こうした意図での選択はある。しかし根本的に、サッカーの撮影は動体撮影。以前の「記憶色」のところでも述べたように、秒単位での光の状況変化が避けられない場合が珍しくない。いや、広いグランドに立ち、レンズを左右に振りながら撮影するのだから、各パラメーターが変化するのは当たり前なのだ。それに加え、グランドの半分近くが影で覆われている事もあろうし、夕方の光量変化する時間帯での試合もあるだろう。晴天だと思っていたのが、急に雲がかかったり、曇天から一時的に日が射すことも、ボールの行方によって順光・逆光が目まぐるしく変わることなど、よくあること。こうした、その時その場で変化する状況を前提に撮らなければならないのがサッカー撮影だとするならば、どのモードを使おうとも、F値やSSの変化は避けられない。避けられないのであれば、いったい何が変化して欲しくないのか、何が多少変わっても許容できるのか、を見極めなければなるまい。



広いグランド内を不規則に動き回る被写体を、画角の狭い望遠レンズを使って追い、捕捉し、チャンスを狙うというのだ。変化するパラメーターにばかり注視するわけにもいかず、どちらかと言えば、それよりも被写体である選手とシャッターチャンスの方に、より神経を割きたいサッカー撮影では、変化するパラメーターが、撮影者自身の許容範囲に留めていてくれる設定を選びたいことが多い。撮影者の意図を写真表現に加える能動的選択に対して、条件が変化しても撮影者の意図を維持するための、こうした受動的な選択を強いられる。
そして実はこの、能動的・受動的、両方のバランスを考慮しながら、その場その場で設定を合わせていくのが、サッカー撮影だと私は思っている。