漆黒は逃げ去り、群青色から澄んだ青へと変わった空を見上げる。
今日も快晴だ。煌めく波間が目に痛い。
いつもの手順で愛船に火を入れれば、いつもの声で答えてくれる。
波の無い小さな湾を静々と進む。
焦ることはない。小さな灯台が見えたら、エンジン全開だ。
さて、今日はどうだろう。狙った獲物は取れるだろうか。
もちろん大漁ならば言うこと無し。だが駄魚ばかりではたまらぬ。
昨日、思案の末に仕掛けた網の元に静々と近づく。
この足下の数メートル、数十メートル下には必ず居る。
俺が狙う獲物は必ず居るはずだ。
船に付けたモーターで、一気呵成に網を引く。
昔の人力とは違うが、この時の緊張感は同じだ。
成果は全て船の生簀に放り込む。
結果は気になる。けれど今は確認する暇は無い。
すぐに次の網に取り掛かる。
額から汗が流れる。それでも、今この時を惜しんではいけない。
水面を睨み続けてどのくらい経っただろう。フッと一息つく。
確かに手ごたえのあった成果も、幾つか見られた。
少なくとも、今日ここまで来た甲斐ぐらいは得られた実感は有る。
それならば、と船の切先を港に向ける。
成果の確認は帰ってからでいい。取った実感はあるのだから。
帰港後に陸揚げする際にじっくり吟味する、それを楽しみにしよう。



漆黒は逃げ去り、群青色から澄んだ青へと変わった空を見上げる。
今日は快晴だ。決勝戦に相応しい。
昨夜用意しておいた機材をトランクに入れ、キーを捻る。
まだ澄んだ空気の中、眠りから覚めたばかりの街を静々と進む。
焦ることはない。100kmほど先のサッカー場へ続く高速道路に乗る。
さて、今日はどうだろう。狙った画は撮れるだろうか。
もちろん大漁ならば言うこと無し。だが駄作ばかりではたまらぬ。
昨日、思案の末に考えたポジションにカメラを置く。
この眼前の十メートル、二十メートル先には、必ずある。
俺が撮りたいシーンが必ず出現するはずだ。
AFと連写モードで、一気呵成に目の前の懸命を形にする。
銀塩時代とは違うが、集中力が必須なのは同じだ。
成果を確認する余裕などない。
気になるけれど、途切れることなく続くプレイが許してはくれない。
次から次へと煌めくシーンを追い求め、レンズを振る。
額から汗が流れる。それでも、今この時を惜しんではいけない。
ピッチを睨み続けてどのくらい経っただろう。フッと一息つく。
確かに手ごたえのあったショットも、幾つか得られた。
少なくとも、今日ここまで来た甲斐ぐらいは得られた実感は有る。
試合終了のホイッスルで、この緊張感から解放される。
成果の確認は帰ってからでいい。撮った実感はあるのだから。
帰宅後にパソコンの画面でじっくり吟味する、それを楽しみにしよう。