セミはもう行ってしまった

西に沈む陽が早くなったこの頃には

代わって、コウロギに主役が回ってきた

朝夕に流れる空気が変わったせいなのか



今年もまた夏が行く

照れば日差しに強さがまだ残っているけれど

肌に、目に、耳に、空に、草木に、人に

夏の店じまいを感じる



季節は巡る、巡る季節は時の流れ

この夏私は、どの位進んだだろう

額に汗して走り回ったのに

立ち尽くすのが精いっぱい、だったのか



空色が漆黒に変わるその間

群青色が空を覆うとき

次の季節へ向かう風が吹く

今はただ、その風が少し心地よいだけ