サッカー撮影を前提とするならば、俯角の撮影=上方に位置する観客席からの撮影、となる場合が殆どで、その場合は必要焦点距離は長くなる、と考えて良いのではないか、と前回書きました。もう一つ理由があります。それは、手前のタッチライン沿いの攻防が撮り難いことです。
サッカー撮影は人物撮影、と以前書いたことがあります。人物撮影である以上、顔は重要なポイントです。ただでさえ、地面付近にあるボールに視線が行く選手は、下を向く時間が長いのに、これにプラスして上方から撮るという事は、更に顔や表情を撮るチャンスが少なくなります。陸上トラックのある競技場の場合は、前回書いたように、元々被写体との距離がかなり離れますから、俯角は浅く、長焦点距離のレンズが必須になります。そんな陸上トラックが無い場合でも、被写体が近づくほどに俯角(見下ろす角度)が深くなり、選手の斜め頭上から撮る事によって選手の顔を写すことが難しくなることは、理解いただけると思います。観客席最前列から手前のタッチライン沿いの攻防は、最も近くて撮り易そうに思えますが、実は上方からの俯角が大きい故に、撮っても表情の読めない写真になるケースも多いです(唯一、選手が上を見上げた時を除いては)。


そうなると、俯角があまり大きくならない選手・プレイを撮るようになってしまいます。俯角が大きくならない、とは、撮影者から見て遠くの選手・プレイ、ということになります。手前のタッチライン付近に比べれば、ピッチ中央付近は俯角が浅く(つまり水平に近い)、グランドレベルで撮る感覚に近くなり、選手の表情を狙いやすい。でもそれは、撮影レンジが遠くなることを意味し、長い焦点距離が必要という事とイコールなのです。下にその概念図を載せてみました。


下の写真は、上の写真と同じ日に同じ試合を、観客席最前列から撮ったものです。ブログ掲載上、4:3にトリミングしてありますが、感じとしては分かっていただけるでしょうか。(1D4+EF400mm F5.6 L)


もちろん、誰でも長焦点レンズを用意できる訳ではありませんから、小さく撮ってトリミング、という方法も否定しません。観客席からの俯角の撮影の頻度が多い場合は、それを主としたレンズ選びをすべきでしょうが、ご自分のお子さんやそのチームメイトを主に撮るであろうアマチュアカメラマンの場合は、汎用性は無視できません。一年間撮り続けたとして、そんな観客席からの俯角の撮影が2.3回程度ならば、それ用のレンズを用意することは予算的に難しい方が多いでしょう。ここは1.4倍テレコンやトリミングで乗り切るのが現実的かもしれませんね。