物を擬人化して述べるのは好きではないけど、Kiss DX、オマエは実にイイ奴だった。
2007年1月に我が家にやって来た時は、1D MarkⅡのサブ機としてだった。それまで「サブ機など贅沢だ」と思っていた私に、写真撮影の幅と言うやつを教えてくれたのは、オマエだったのかもしれない。確かにサッカー撮影に使ったら、まったく不本意な成績しか残せなかったし、レンズキットに付いてきたEF-S18-55 F3.5-5.6(IS無し)との組み合わせでは、どうも作画意欲に乏しいのは否めなかった。
1D系には遠く及ばないその性能でも、そのコンパクトなボディに着目すれば、意外な使用頻度を生んだ。年間撮影枚数3~5万枚の1D系に比べれば、このKiss DXは在籍4年の聡ショット数は1万枚にも達しない。けど、自宅の防湿庫から取り出す回数は、このKiss DXが一番多かったのも事実。サッカー撮影のお伴に、街中のスナップ撮影に、ブログに載せる物撮りにと、気軽に持ち出せ、素早く取り出せ、RAWで撮れば今でも充分使える画質と、実に重宝してきた。コンパクトなボディとシンプルな構成が、そしてこれまで一度もエラーやトラブルとは無縁でいたことも、意外と私に、そういった用途での使い易さと安心感を与えてくれた。
レンズを SIGMA 18-50mm F2.8 EX DC Macroに替え、SIGMAでのピント調整を終えてからは、この組み合わせでずっと使ってきた。ズーム比は3倍にも満たないし、手ぶれ補正機能も無いレンズだが、F2.8の明るさは、一眼らしい画を得るために何物にも代えがたいし、簡易的とはいえ、マクロ的に使える最短撮影距離は、ちょっとした物撮りにも躊躇なく使えた。色乗りが豊かとは言い難いが、SIGMAらしいシャープな画は好みだし、ピント精度も、どの測距点を選んでも心配なく、こうした用途に安心感を持って持ち出せたのが、この使用頻度に繋がったのだろう(動体撮影だけはムリだが)。
Kiss DXの上役は、1D2から1D3、そして今は1D4となり、サッカー撮影におけるサブ機の座は7Dに譲ったが、4年以上経っても私的には、充分使えるカメラだと思っていた。それが今回、思いがけず手放さなくてはならなくなり、口惜しい気も無いわけではない。しかし、始まりがあれば、終わりも必ず来る。今この時点で、新しいオーナーの元に旅立つことは、オマエの更なる活躍の機会の増加と、新オーナーに撮る喜びを与えることに繋がるかもしれない。そう思って、気持ち良く送り出すことにした次第。旅立ち前夜、綺麗にブラッシュアップしたが、新天地でも可愛がってもらえるだろうか。愛着を持って今後も使われていくことを、今はただ願っている。
さらば、Kiss DX。オマエは実にイイ奴だった。