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すそ野にて 10(タマゴが先かニワトリが先か) [サッカーあれこれ]

今更感がありますが、ひと言。
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東京オリンピック・パラリンピックが閉幕して少し経ちました。私はその頃(ご存知のように)葬儀関係で忙しく、あまりテレビで観戦できなかったのですが、そのオリンピック関連の報道も一段落した感が有りますね。その開催の是非については他の方にお任せするとして、実際に開催されれば日本人の多くが関心を持ち(政府の狙い通り?)、テレビ放映に一喜一憂し、ネットでの解説や論評を興味深く見たことと思います。もちろん私もその一人です。私がそれらの報道の中で一番印象に残ったのは、結果の如何に問わず、選手たちがこの大会を開催してくれた多くの方々に感謝の言葉を述べていたことです。アスリートにとって最も目標にすべきオリンピック、しかも自国開催です。それが、行われるのか出られるのか分からないコロナ禍の状況は、全ての競技の選手たちが、多大な不安とプレッシャーにさらされていた証左がこれらの言葉となって表れたのでしょう。それを耳目から得た我々は、爆発的な感染拡大のニュースを横目で見ながらも、オリンピアンの活躍に拍手を送ったことと思います。
さて、私の関わっているサッカー競技ですが、その結果は既にご存知のこととして割愛させていただきますが、期待はしていても現実的な結果になった、と言えば酷でしょうか。男子はベスト4まで勝ち上がる活躍を見せてくれましたが(メダルへの夢を見せてくれましたが)、海外からの評価はベスト4に残ったチームでは最弱と目され、結果はその通りになりました。世界ランク10位の女子は、ランク上位のチームに勝つことができず、ベスト8で去ることになりました。海外メディアからは大方「順当」との評価のようです。自国開催の最大のメリット、大観衆のサポーターの後押しが無かったことが、「順当」を生んだ一因でしょう。その点は、惜しいと言えばそうだと思います。
ここで女子サッカーに目を向けて見ます。女子のなでしこジャパンは、開催国として最低限のノルマ、決勝トーナメントに進みましたが、世界ランク5位のスウェーデンに1-3で敗れました。私はこれまで、「頂を高くするためには、すそ野を広げること」と書いてきましたし、実際に10年前のW杯優勝でサッカーに興味を持つ子達が増え、日本サッカー協会(JFA)も女子の振興に本格的に力を入れ始めたと記憶しています。しかしその後、欧州各国が急激にレベルアップしている実情を考えれば、世界ランクが示す通り、トップを狙える国ではなくなってきていることも事実です。その為に「すそ野を広げる」という事を書いてきたのですが、世界ランク1位のアメリカは約160万人、2位のドイツは約100万人とも言われる競技者数に対し、日本は2011年のW杯優勝後に増加した5万人前後から伸び悩んでいます。日本を破って決勝進出を果たしたスウェーデンは、人口(約1000万人強)は日本の10分の1以下ですが、女子サッカーの競技人口は97,000人(15歳以上)で日本の約2倍もいる、らしいです。JFAは今年からWEリーグをスタートさせます。これは欧州各国が男子のビッククラブを中心に女子チームを持つことに倣ったことと思います。まだまだプロ契約の女子サッカー選手の少ない日本で、こうした女子サッカーの環境整備は重要な事と賛同いたします。しかし、それが女子サッカーのすそ野を広げることに繋がるかどうか、現時点ではまだ不透明な部分も有るのではないかと思ってしまいます。
今回の東京オリンピックで、日本は女子バスケットボールで銀メダルを取りました。世界ランク1位のアメリカには決勝で敗れましたが、十分に「快挙」と言える素晴らしい成果だと思います。そして今後、この成果を目にした子供達がバスケットボールに向かう姿が想像されます。外国人選手よりも背が低くても、頑張れば十分に対抗できることを証明したからです。そして、どの中学校にも高校にも体育館が有り、殆どの学校にバスケットボール部が既に存在しているのです。その指導環境は様々でも、受け皿は既に有るのです。それに対して、女子サッカー部が無い中学校や高校が未だ多く存在します。それが女子サッカー人口の伸び悩みの原因の一つではないでしょうか。
強豪国と言われる国は、その人口は日本より少なくても、すそ野を広げてベースとなるものを固め、頂へ向かって積み上げてきました、この約10年の間に。ピッチに立つのは同じ11人ですが、そのバックに控えている選手たちは、日本よりずっと多いのです。そのすそ野を広げることが、日本の女子サッカーの頂を高めることに繋がると、私は信じています。一方で、頂(日本代表)が高くなれば、それに憧れ、目指す子達が増え、自然とすそ野が広がることもまた事実です。それは10年前の女子W杯優勝で証明済みです。もちろん、それらの卵を受け入れ、育てる側の環境整備も必要でしょう。指導・育成の成熟が無ければ、優秀な卵は優秀な選手にはならないのですから。そう考えていくと、サッカーピラミッドにおけるすそ野を広げることと、頂点である日本代表が成果を示すことは、表裏一体なのかもしれません。「タマゴが先か、ニワトリが先か」ではなく、「どちらも同時に」というのは、難しいことでしょうが。

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