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帰り人 [巷の雑感・時の想い]

昔は一軒家を立て、そこで子供たちと暮らしていた我が家ですが、今は私の不徳の致すところで、借家住まいです。その隣人Mさんが先日、引っ越して行きました。

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元々は東京23区内の一等地に一軒家を構え、大企業と言われる会社に勤める(たぶん)エリートと呼ばれるような温和な方でした。もちろん詳しい事情は分からないのですが、7年前にこの地方都市に単身赴任でやって来て、最初に住んだところが騒音等で気に入らず、1年で引っ越して我が家の隣人となりました。といっても、親しく付き合っていた訳ではありません。連休や週末には東京へ帰ることが多く、平日も夜遅く帰っては早くに出社する、という生活でしたから、それほど頻繁に顔を合わせていた訳ではありません。単身赴任だから2~3年で東京に帰るのだろう、と思っていたら、6年も隣人であり続け、やっと念願の自宅に帰れることになったようです。
引越のことを告げられた時に、「よかったですね、これでご家族の下へ帰れますね」と言いました。Mさんは、ホッとしたような嬉しいような、そんな感じに見えました。プライベートなことを詮索する気も無いですが、引っ越し日の立ち話の時に、私より6歳若い方だと初めて知りました(もっと若いと思っていました)。定年を意識する年代ですが、それまでは家族の居る自宅から通勤するようです。何だか別れるのは寂しいですが、彼にとってはきっと良いことなのでしょう。「生活面でいろいろ教えていただいたり、お世話になって、ありがとうございました」と言ってくれました。私は、「東京に比べれば、こんな田舎に7年も単身赴任しなければならないのは、不自由で不本意だったと思います。この街での7年間は、Mさんにとって良い印象ではなかったかもしれません。けれど、ここも住んでみればまんざら悪い所ではないですよ。また近くまで来られたら寄ってください」と応えました。
朝から業者が荷物を運び出していましたが、単身赴任ではそう多くの荷物ではなかったようで、小一時間で業者のトラックへの積み込みが終わりました。最後に別れる時、お互い深々とお辞儀をし合って、Mさんは去っていきました。いや、帰っていった、と言った方が良いかもしれません。また一つ、別れを経験してしまいました。
人はその人生の中で多くの他人と出会います。その人の繋がりは、深かったり浅かったり、濃かったり薄かったり、様々です。多くの事を知ってしまったり、知らない方が良かったり、様々です。それでも、身近な人がいなくなることには、幾ばくかの寂寥を感じてしまいます。でもMさんの今後を思えば、きっと良い事なのだと思うことにしました。
空は晴、でも冷たい風の吹く日のことでした。

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